予防歯科
予防歯科とは、歯周病や虫歯になってからの治療ではなく、歯周病や虫歯になる前に予防するための取り組みのことを指します。
歯科医院でのプロフェッショナルケアと、自宅で行うセルフケアの両方が大切です。
セルフケアだけでは、歯垢や歯石を完全に取り除くことができません。歯科医院に定期的に受診し、虫歯や歯周病にならない健康な歯を維持していきましょう。
予防歯科を行なっている歯科医院といってもそのあり方は様々です。
定期検診で虫歯を発見し治療するだけの歯科医院もあれば、きちんと虫歯の原因やリスクを説明し改善させることで、今後虫歯にならないように管理している医院、さらには歯周病の管理まで行う医院と色々です。
予防歯科を受診するメリット
健康な歯のまま長く維持できる
予防歯科の最大のメリットは、歯周病や虫歯などを事前に防ぐことができることです。
虫歯になって治療が必要になると基本的には歯を削り、詰めるか被せることになります。削った歯は元には戻らず他の修復物で置き換えられています。
自分の歯を削らずに虫歯や歯周病を予防することは、当然体に優しく健康的なことです。
身体の健康に貢献する
お口の健康と身体の健康は密接につながっています。
特に歯周病と全身疾患との関連性は様々な発表がなされています。
歯周病と関連性のある主な疾患 |
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時間の節約になる
虫歯や歯周病になると治療のために何回か通院が必要になります。
特に虫歯が深くて神経を取った場合や、歯を失って入れ歯やインプラントになる場合も期間も回数もそれなりにかかります。
長い目で見ると検診に通っていた方が、人生の中での歯科医院の滞在時間は少なくて済む可能性が高いと考えられます。
医療費が少なくなる
一度歯周病や虫歯になってしまうと治療には費用がかかります。
もし歯を失ってしまうとインプラントにするだけで50万円前後となりますが、検診は3~6ヶ月に数千円程度です。
このため、検診はその都度費用はかかりますが、人生という長期で見てみると医療費は抑えることができます。
上の表は「残っている歯の本数」と「年間医療費」の関係を表したものと年間の歯科検診回数と年間医療費の関係を表したものになります。 お口の中の歯の本数が4本以下の人と20本以上の人では年間の医療費は19万円ほど差があります。また1年間に定期検診を一度も受診されてない人と3回以上来られている人では年間の医療費は9万円も差があります。
これを見ると残っている歯の本数と体の健康に関係があることがわかります。
歯を失う原因の1つである歯周病1つにしても上記のように糖尿病、心筋梗塞などの病気との関連性が報告されています。歯をしっかりと管理し少しでも長く残すことができるならばより健康的で医療費も抑えることができます。
当院の予防歯科の考え方
当院では、現状の把握と虫歯、歯周病のリスクマネージメントも行います。
「治療型」の治療は、病気を発見→治療の繰り返しでした。
しかし、当院の「予防型」の歯科治療は、検査→病気の発見→リスク判断→リスク改善→治療→予防的管理といった流れで、患者さんのお口の健康をサポートしていきます。
高品質の治療を実践し、同時にリスクを改善し、リスクをコントロールしていくことで健康を維持していきます。
治療の流れ(大人)
1.問診
問診では、まず患者さんの現在のお口の状態や悩みをお伺いしていますので、どんな些細なこともお気軽にお話ください。応急処置が必要な場合は問診の後にすることもあります。
2.レントゲン撮影
レントゲン撮影は、お口全体を写すことができるパノラマレントゲンと、個々の歯の状態を詳細に把握することができるデンタルレントゲンの撮影を行います。
レントゲンでは、見た目では分からない歯周病・虫歯・歯の破折、その他の問題を確認することができます。
レントゲンの撮影は、虫歯を発見することだけにしているわけではなくこのあとに行われる「歯ぐきの精密検査」ともに歯周病に診断に欠かせません。また歯と歯ぐきの隙間の深い場所にある歯石も映ることがあり歯石除去のためにも必要です。
レントゲンの結果をお見せしながら、現在のお口の中の状態をご説明します。
3.口腔内写真撮影 (5枚〜14枚)
口腔内写真撮影(こうくうないしゃしんさつえい)とは、専用のカメラでお口の中を撮影することです。
お口の中はご自身では見えにくい場所が多いため、患者さんの現在のお口の状態を写真を見ながらご説明します。
定期的に口腔内写真を撮ることで以前のお口の状態と現在のお口の状態を比較できます。以前のお写真と比べ悪い変化起きていた場合はそれにいち早く気付くことができますし、軽度の虫歯の経過観察部位が悪化していないか、歯ぐきが痩せてきていないか等写真の記録を撮ることで客観的な記録になります。
当院ではレントゲン写真同様口腔内写真も予防歯科でしっかりお口の健康を生涯に渡り維持するために必須と考えております。
4.歯ぐきの検査
歯ぐきの検査では、歯と歯ぐきの溝(歯周ポケット)の深さをポケットプローブと呼ばれる専用の器具を使用して測り、同時に排膿や出血の有無、動揺の程度などを検査します。
レントゲン写真と歯ぐきの検査の結果を総合的に判断し歯周病の有無、進行度、今後のリスク判断をします。
5.セルフケア指導
歯周病、虫歯の予防には、毎日のしっかりとした歯磨きが基本です。
セルフケア指導では、患者さん一人ひとりのお口の状態にあった正しい歯磨きの仕方を指導していきます。
一度正しい磨き方を身につけると今後のリスクを大幅に減少できます。逆に磨き方に問題があるとどんなに時間をかけて磨いても効果は低いです。当院ではテレビを見ながらといった所謂『ながら磨き』は推奨してません。限られた時間で集中して磨いた方が効果が得られると考えております。
また、必要に応じ汚れている部分を赤く染める染め出し液を使用して磨き残しのチェックを行い、PCRと呼ばれる汚れ具合の指数を参考にしっかりと自分で歯磨きができるかを把握しながら指導していきます。患者さんに目でみてわかりやすい指導を行っております。
6.虫歯のリスク診断
当院では、日本ヘルスケア歯科学会によって考案されたCRASP(Caries Risk Assessment Share with Patients)を使って虫歯のリスク診断を行なっています。
毎年のように虫歯が見つかってしまう方は原因を探らないと来年以降も同じように虫歯になってしまいます。
原因と考えられる項目が見つかればそれに対してアプローチをしていきます。
7.治療
歯周病治療
必要に応じて歯周病の治療を行います。
・スケーリング:歯石の除去
・SRP(Scaling and Root Planing):歯周ポケット内の深い目に見えない歯石を除去するとともに、歯面を滑沢にしプラークの付着を防止します。
・歯周外科:スケーリング、SRPでも病的な歯周ポケットが残ってしまった場合外科的に深い歯周ポケットに対してアプローチしていきます。
歯周病の治療後は、歯ぐきの検査を再度行い、治癒していれば次のステップに進みます。
虫歯治療
必要に応じて虫歯の治療を行います。
削らないで経過観察で済むと判断した場合はしっかりと経過を見て行きます。
当院ではICDASコード3までは経過観察をしていくことが多いです。
ICDAS(The International Caries Detection and Assessment System):う蝕の国際基準
8.定期的管理
治療完了後は、2〜6ヶ月ごとを目安に定期的な管理のためのご来院をご案内しています。
主な内容は以下の通りになります。
視診:虫歯の有無の確認、詰め物・被せ物の状態確認、歯のヒビ、経過観察中の初期虫歯の状態確認
レントゲン:虫歯の有無の確認、歯周病の状態確認、その他異常の有無の確認(1年に1回程度)
歯ぐきの検査:歯周ポケットの深さ、歯の揺れ具合など、磨き残しの確認
CRASPによる虫歯リスクの確認
歯ブラシ、フロス、歯間ブラシなどの清掃器具の仕方の確認
歯ぎしりや食いしばりチェック
PMTCによる、ホームケアでは取りきれないバイオフィルム
スケーリング(歯石の除去)